"「ヒモ男」と笑われた夫と私に、88歳の祖父が深く頭を下げた" 第5話
無職で暇なら、それくらい族のために働くのが当たりでしょ? それとも何? おじいちゃんのことが配じゃないっていうの?」
断れば「孝者」のレッテルを貼られる。
悠真が断れば「仕事もしないくせに族の介護すら拒絶するヒモ男」と叩かれる。
逃げを完全に塞ぐ、いつもの卑劣な同調圧力。
私の喉がりで塞がれそうになった、悠真が静かにをいた。
「おじい様」
悠真は叔父でも叔母でもなく、真っ直ぐに祖父の目を見つめた。
「おじい様ご自は、これからの暮らしについて、どうなさりたいとお考えですか?」
叔父の顔がピキリと固まる。
祖父はく息を吐きし、叔父を睨みつけた。
「私の暮らしのことだ。私抜きで勝に決めるな」
「親父! 俺たちは親父のことをって――」
「黙れ!」
祖父がし、叔父は怯んだようにを噤んだ。
私は拳を握りしめ、叔父と叔母に向かってはっきりと告げた。
「私たちは、おじいちゃんが必とする助けなら、できる限りのことをします。でも、叔父さんたちに都よく介護を押し付けられる筋いはありません」
その瞬だった。
追いつめられた叔母の理恵が、ヒステリックに声を荒らげたのは。
「では派なこと言って! じゃあ聞きなさいよ! 今までおじいちゃんが何度も入院してがかかった、体誰がしてきたとってるの!?」
理恵は広の親戚たちを見回すように、誇らしげに胸を張った。
「ぜーんぶ、うちの――達夫さんがしてあげてきたんじゃない! 希ちゃんたちが体かしたくらいで偉そうにしないでよ! 番おをして支えてきたのは、うちの達夫さんよ!」
親戚たちが「まあ、それは確かに……」「結局はおをしてるが番変よね」と頷きう。
叔父はふんとを鳴らし、再び優位にったかのように顎をしゃくった。
嘘だ。
そんなはずはない。
直にそうった私の界の隅で、異様な景が目に入った。
母だった。
母の子が、信じられないものを見たように目を見き、顔から完全に血の気を失っていた。
唇がに変し、刻みにガタガタと震えている。
「……お母さん?」
私が呼びかけた瞬だった。
カラン、とい音が静まり返った広に響いた。
母の震える指先から取り落とされた塗り箸が、陶器の皿に当たって虚しく転がっていた。
「……ご、ごめんなさい。が滑ってしまって」
母は引きつった笑みを浮かべ、震える指先で畳のの箸を拾いげようとした。
その指が刻みに痙攣しているのを、私は見逃さなかった。
隣に座る叔母の理恵が、ややかな線を投げながらを鳴らす。
「ほら見なさいよ。希ちゃんたちが謝もなしに叩くから、子さんまで揺しちゃったじゃないの」
「そうだぞ」
叔父の達夫が、がを得たりとばかりに胸を反らせる。
「親戚のを乱すような真似はよせ。おたちがいくら威勢のいいことを言ったところで、親父の治療費も薬代も、全部俺の財布からてるんだ。をせないがだけすな」
親族たちのに、気まずい同の空気が広がる。
『まあ、達夫さんが番おをしてるなら……』『結局、実質な支えがないと介護なんてできないものね』
線が再び、私と悠真へのたい軽蔑へと戻っていく。
私は言い返そうと唇を噛んだが、母がを向いたまま、私のスカートの裾を必に引っ張っていた。
そのさく縮こまった背から、言いようのない怯えが伝わってくる。
座に座る祖父は、鋭いのまま母の様子をじっと見つめていた。
だが、それ以は何も言わず、い沈黙ので米寿の宴は打ち切られるようにしておきとなった。
料亭の駐をる際、叔父の黒い級が私たちの横を乱暴に追い抜いていった。
窓越しに見えた叔父の横顔には、勝ち誇ったような醜い嘲笑が張り付いていた。
その直、私のスマートフォンがい通音を鳴らした。
親族のグループLINEだった。
『来週曜までに、悠真くんの空き程をすべて提すること。親父の通院付き添いと用品買いしの専任シフトを組む。
男が無職で暇を持て余しているなら、族のためにを使うのが筋だ。