"「ヒモ男」と笑われた夫と私に、88歳の祖父が深く頭を下げた" 第12話
営業マンの顔がサッと変わった。
「えっ……ご、名義様のご承諾は、まだ……?」
「おい、余計なを挟むな!」
叔父が悠真の胸元を突きばそうとしたが、悠真は歩も引かず、岩のようにそのにち塞がった。
「のの財産管理にをすな、このヒモが! てめえ、自分が無職だからって、親父の遺産にタカる気満々じゃねえか!」
「おじさん、いい加減にして!」
私の叫び声に、営業マンは「本は直します!」とをげ、逃げるように玄関からびしていった。
聞を完全に潰された叔父は、額に青筋を浮かべ、獣のように息を荒らげていた。
「……覚えてろよ」
叔父は吐き捨てるように私を睨みつけた。
「の程らずの娘が、どこの馬の骨ともれん男を連れ込んで、藤森の本に盾突いたんだ。ただで済むとうなよ」
叔父は乱暴に襖を閉め、っていった。
で響いた激しいタイヤの軋み音が、叔父の狂気じみたりを物語っていた。
叔父の報復は、湿かつだった。
そのの昼過ぎ、私のスマートフォンが狂ったように通を鳴らし始めた。
親族のグループLINE。
投稿主は、叔父の妻である理恵だった。
『皆様、緊急のご報告です。希ちゃんが撃結婚した無職の夫ですが、今朝、おじいちゃんの自宅に勝に押し入り、をリフォームさせろと迫ったそうです。
おじいちゃんの判断能力が衰えているのにつけ込み、遺産やの権利を狙っている疑いがあります。達夫さんが必に止めに入ってくれましたが、暴力汰寸でした。皆様、どうか希ちゃんの甘言に騙されないでください』
画面をスクロールする指が震えた。
従兄弟たちや叔母たちからの返信が、滝のように続いていく。
『信じられない……希ちゃん、そんな子だったの?』『やっぱり無職の男なんて連れてくるからだ』『おじいちゃんがすぎる。施設に入った方がなのに』『子さんは何を教育してきたの?』
「……っ、何なの、これ……!」
涙が悔しさで溢れた。
事実をすべて真逆に捻じ曲げ、私たちを『遺産を狙う卑劣な侵入者』に仕てげている。
母のスマートフォンにも、親戚から非難と詰問の話が殺到しているらしく、母から『希、どうしよう、みんながってる……』と泣きそうなメッセージが届いた。
「悠真さん……どうしよう、私……」
悔しさと無力で呼吸が乱れる私を、悠真は黙ってく抱きしめてくれた。
トクトクと刻まれる悠真の音だけが、元で温かく響く。
「丈夫だ、希。全部、記録してある」
悠真は私の背を優しくさすりながら、静かに、けれど鋼のようなさで言った。
「今朝のやり取りの音声も、叔父さんが無断で連れてきた産の名刺も、全部残ってる。
相が嘘をねればねるほど、で自分の首を絞めることになる」
「でも、親戚みんなが……お母さんのことまで責めて……!」
「逃げちゃダメだ」
悠真は私の目を見つめた。
「ここで曖昧に済ませたら、お義母さんも、希も、あのたちから棒扱いされる。ちゃんと、公ので決着をつけよう」
その、祖父のの固定話から、私の携帯に着信が入った。
恐る恐る通話ボタンを押すと、受話器の向こうの祖父の声は、朝よりも遥かにく、りに満ちていた。
『希。……LINEとやらで、あいつらが騒ぎてとるそうじゃな』
「おじいちゃん……ごめんなさい、私たちのせいで……」
『謝るな』
祖父のに、背筋が伸びた。
『舐めおって……。あいつらは、このわしがもう何も見えんボケ老だとを括っとるんじゃ。……希、の夜、親族を全員このに集めろ』
「え……?」
『藤森運輸の役員をしとる老衆も呼ぶ。わしが直接、あいつらに引導を渡してやる。おたちは、昨夜の“あの証拠”を持ってこい』
祖父はそう言い残すと、カチャリと話を切った。
腹は決まった。
これ以、母を泣かせない。
悠真を侮辱させない。
私たちは、母のアパートから持ち帰った通帳のコピー、領収の束、そして叔父のLINEメッセージの魚拓を、冊の分い青いファイルへと丁寧に綴じ直した。
翌の夜。
祖父のの居には、異様な気と緊張がち込めていた。
叔父の達夫、叔母の理恵はもちろん、藤森運輸の創業期からの古参役員である親族の老たち、そして母の子を含め、ほどの主な親族が座になって座っていた。