"「妻も了承した」夫が勝手に約束したのは、亡き母のマンションだった" 第3話
唾をばしながら、私を「悪妻」に仕てげようとする夫。 けれど、瞳の奥にあるのは正義なんかじゃない。 「頼れる男」を演じるための呂敷が破綻したことへの、浅ましい焦りだけだ。
「悟さん。あなたが昨夜、族ので本当のことを言わなかったからでしょう。私が最初から断っていたことも、今が引き渡しだったことも隠していた」
痛いところを突かれ、夫の喉が引きつる。
「俺は……に入って、丸く収めようとしてただけだ!」
「丸く収める? 嘘をついて私を悪者にして、従わせようとしたことが?」
私はちがり、夫を真っ向から見据えた。
「今すぐグループLINEで事実を訂正して」
「……は?」
「奈美は最初から断っていた、自分が勝にめると期待を持たせて嘘をついていた、部が見つからない責任は奈美にはない。全員ので、はっきりいて」
夫は顔を歪め、「そんなげさなことできるかよ」と吐き捨てた。
「できないなら、私が産との媒介契約も、あなたとのLINEも、全部義実に持参して説するわ。あなたがいつからっていて、どう誤魔化していたのか、全部」
私の声に微の揺らぎもないことを悟ったのだろう。 夫は忌々しそうにスマートフォンを引っ張りした。
数分、リビングにい通音が響く。
画面に表示されたのは、夫が投稿したメッセージだった。
『奈美も悪気はなかったんだ。ちょっと気持ちがすれ違っただけだから、これ以責めないでやってくれ。俺からもよく言い聞かせておくから』
指先が、すっとたくなった。
事実など、何つかれていない。 「奈美も悪気はなかった」「気持ちがすれ違った」「俺からよく言い聞かせる」。
この男は、この期に及んでもなお、自分が矢面につことを拒絶したのだ。 妻がになって暴したかのように装い、自分はそのを被って庇う「度量の広い夫」を演じる。 責任は、完璧に私の「狭量さ」にすり替えられていた。
「これでいいだろ」
夫はで笑い、寝へと向かった。 やがて浴からシャワーの音が聞こえてくる。
私は暗いリビングで、スマートフォンの青いを見つめていた。 吐き気がするほどの欺瞞。 、私はこの男の「優しさ」の裏にある、底なしの卑怯さを見落としていたのだ。
その、画面の部に通が滑り込んできた。 義妹の真紀さんからだった。
『奈美さん、夜遅くに本当にごめんなさい。……つだけ、確認したいことがあるの』
メッセージをいた私の指が止まる。
『先のお母さんの誕のこと。お兄ちゃんから「奈美はうちの集まりが苦で、関わりたくないから来ない」って聞いたの。……それって、本当なの?』
……え、待って。どういうこと?
目のが、真っ暗になった。
先の義母の歳の誕。 私は会社の監査となり、週から夫に「どうしても休めない」とをげていた。
それどころか、夫に渡してもらうために、デパートで万千円のシルクのスカーフを買い、を添えて託したはずだった。
『奈美さん? 起きてる?』
震える指で、私は返信を打ち込んだ。
『真紀さん、詳しく教えて。悟さんは、皆さんに何て言っていたの?』
数秒、送られてきた画面のスクリーンショット。 見慣れた夫のアカウントから、族グループへ送られたメッセージ。
『奈美はああいう親戚の集まりが苦みたいだから、あまり誘わないでやって。俺から母さんには適当に言っておくからさ』
喉の奥が、からからに渇いていく。
残業のことも、スカーフのことも、何つ伝わっていなかった。 それどころか、あのプレゼントはどこへ消えたのか。
混乱する私の画面に、今度は義姉の綾子さんからメッセージが着信した。
『奈美ちゃん、真紀から聞いた。……嘘でしょう? じゃあ、の私の婚のとき、奈美ちゃんが「自業自得だし巻き込まれたくない」って言ってたっていうのも、お兄ちゃんの嘘だったの……?』
背筋を、氷のような気が駆けがった。
、綾子さんが婚調でボロボロになっていたとき。 夫は私にこう言っていた。
「姉ちゃん、今は誰とも会いたくないらしい。
みじめな姿を見られたくないって言ってるから、連絡もしないでやってくれ」
。