"「妻も了承した」夫が勝手に約束したのは、亡き母のマンションだった" 第8話
スマートフォンの画面を覆う夫の指先に、ぎりぎりと異常な力が込められていた。
首を軽く捻り、夫の指をスマートフォンの画面から払い落とした。 え切った液晶画面が、パチンと微かな音をてる。
「……何を探ってるかって?」
私は子からちがり、夫の顔を真っ向から見げた。 あのの瞳の奥に、苛ちと、それ以に暗い警戒のが揺れている。
「あなたが隠していることよ。それ以に何があるの」
「隠すって、何だよ」 夫はで笑おうとしたが、その元は引きつっていた。
「俺はいつだって族のためにいてきた。それを……お、姉ちゃんたちを抱き込んで、俺を悪者に仕てげる気か? 俺が族のでどれだけ苦労してきたか、おが番よくってるだろ」
被害者の顔。 、幾度となく見せられてきた、あのの常套段。 自分が番損をしていると訴え、相の罪悪を煽り、を噤ませる。
けれど、今の私にはそのすべてが、ただのっぺらい茶番にしか見えなかった。
「そう。なら、の夜には全部はっきりするわね」
私はスマートフォンの画面をロックし、ポケットへと滑り込ませた。 夫は何かを言おうとをきかけたが、私のえ切った線に気圧されたのか、忌々しそうに舌打ちをして寝へ戻っていった。
翌の曜。
仕事を定で切りげた私は、自宅とは逆方向のに乗った。 向かったのは、義実からも自宅からもれた、隣町の静かな喫茶。
暗い内の奥のボックス席に、つのがあった。 義姉の綾子さんと、義妹の真紀さん。 テーブルののコーヒーには、をつけた形跡すらなかった。
「……奈美ちゃん」
私が席に着くなり、綾子さんが泣きしそうな顔で顔をげた。 真紀さんも膝ので両を固く握りしめ、唇を噛んでいる。
「来てくれてありがとう。とも、顔が悪いわね」
「当たりだよ……」 真紀さんが掠れた声で言った。
「昨の夜、お姉ちゃんとで朝まで話したの。お兄ちゃんが今まで私たちに言ってきたこと、全部答えわせしてみようって」
真紀さんは震えるで、テーブルのに台のスマートフォンを並べた。 画面には、何ものメッセージのやり取りがかれていた。
「奈美さん、これ見て」
差しされた画面を、私は覗き込んだ。 の付。 真紀さんが勤めていた会社の経営が悪化し、転職先を探していた期のトーク履歴。
真紀さんからのメッセージ: 『お兄ちゃん、奈美さんの会社で途採用募集してないかな? 総務だし、何か報あったら教えてほしいんだけど……』
それに対する、夫からの返信。
『奈美に聞いてみたけどさ。「真紀ちゃんって仕事続きしないタイプでしょ? 私の職には紹介できないわ」
って言われちゃったよ。奈美、そういうとこ結構シビアだからさ。俺からも頼んでみたんだけど無理だった。ごめんな。でも俺は真紀のこと応援してるから』
胃の底が、ぎゅっと締め付けられた。
……は? 続きしない? 私の職には紹介できない?
「……私、そんなこと言も聞いてない」 私の声が、く震えた。
「真紀さんが転職で悩んでたことすら、あのから聞いてなかった。当、うちの会社で経理アシスタントの枠が空いてて、誰かいいいないかって探してたのに」
真紀さんの目から、粒の涙が零れ落ちた。
「やっぱり……! 私、あのすごくショックで……奈美さんから見されてるんだってい込んで、それからずっと奈美さんの顔を見るのが怖かったの」
「私もよ」 綾子さんが、耐えかねたようにを挟んだ。
「、元夫から活費を止められて、娘を連れて途方に暮れてた。お兄ちゃん、私に何て言ったとう? 『奈美はの揉め事に首を突っ込みたくないらしい。婚なんて自己責任でしょって言ってた』って……」
綾子さんの声が、悔しさで震えていた。
「私、けなくて惨めで、奈美ちゃんのことんだ。族なのに、なんてたいなんだろうって。でもお兄ちゃんは『俺が姉ちゃんを助けるから』って、々おを包んで持ってきてくれて……私、お兄ちゃんのこと命の恩みたいに信じ切ってた」
喉の奥が、からからに渇いていく。 あの、夫は私に何と言っていたか。