"「妻も了承した」夫が勝手に約束したのは、亡き母のマンションだった" 第12話
「奈美さん! 突然をびして、婚だなんてどういうつもりなの!? 悟がどれだけを痛めているか、あなたには分からないの!?」
叔母さんも、眉をひそめて追撃してくる。 「そうよ奈美さん。悟さんは昔から本当に族いの優しい子よ。しくらい言葉のき違いがあったからって、夫を捨てるなんて恩らずにも程があるわ」
夫は神妙な顔を作り、いかにも劇の主公といったでうつむいている。 「母さん、叔母さん、もういいよ……。奈美を責めないでやってくれ。俺の至らなさが原因なんだから……」
どこまでも吐き気を催す芝居。 私は膝のに置いたクリアファイルから、枚の類を取りし、座卓の央に滑らせた。
「話を始めるに、事実だけを確認させてください」
私の声は、居の空気を切り裂くほど徹だった。
「まずつ目。に私の母のマンションの修理代として共通座からた万円。そのうち、悟さんが負担した額を弁護士ち会いのもとで算しました。私の座から悟さんの個座へ、本全額の送続きを済ませています」
振込細の写しが、座卓のでくる。
「これで、私と悟さんのの産に関する銭トラブルは、法に完全消滅しました。あのが私の財産にを挟む権利は、ミリも残っていません」
夫の顔から、微かに血の気が引いた。
「そしてつ目」 私は夫の目を真っ直ぐに見据えた。
「、私の母がくなった。真紀さんが私のに来て伝おうとしてくれたのを、『奈美はおたちを嫌がっている』と嘘をついて追い払ったのは誰ですか」
「な……っ!?」 義母が息を呑んだ。
「お兄ちゃん、そうだよね」 真紀さんが静かにをいた。元のスマートフォンを座卓に置く。 画面には、の夫からのメッセージが映しされていた。
「私、本当にお兄ちゃんの言葉を信じてた。奈美さんに嫌われてるんだってってた。でも、お兄ちゃんが私と奈美さんを会わせないようにしてただけだった」
「綾子さんの婚のも同じです」 私は髪を入れずに言葉をねた。
「『奈美は自己責任だとたく突き放している』と綾子さんに吹き込み、私には『綾子は惨めだから誰にも会いたくないと言っている』と嘘をついた。お互いを憎みわせるように仕向けたのは、全てそこに座っている悟さんです」
「嘘よ……!」 義母が甲い声をげた。 「悟がそんなことするわけないでしょう! あんたたち、何を馬鹿なことを言ってるの!」
「嘘じゃないわよ、お母さん!」 綾子さんがちがり、声を荒げた。
「全部残ってるの! お兄ちゃんが私たちに送ってきたLINEも、母さんに吹き込んでた悪も! お兄ちゃんは最初から、奈美ちゃんと私たちを分断して、自分だけが良い顔をしてたのよ!」
居が、騒然となった。 娘たちの激しい糾弾に、義母は言葉を失い、狼狽して息子の顔を見つめた。
夫の額から、粒の汗が滴り落ちていた。 「違……違うんだ、母さん! 俺はみんなが揉めないように、気を利かせて……!」
「気を利かせて?」 私はたい刃のような線で、夫の言葉を叩き斬った。
「自分が頼れる男で、唯の理解者であるために、の尊厳と痛みを踏み台にしたのよ。私の母がんで番苦しかったに、私から全ての支えを奪った。それが、あなたの言う『気遣い』なの?」
夫の喉が引きつり、乾いた呼吸が漏れる。 もはや、取り繕うための嘘すら残っていなかった。
その、ずっと黙って成りきを見ていた叔母さんが、ぽつりと呟いた。
「……そういえば、悟さん」
全員の線が、叔母へと集まる。 叔母は信じられないものを見るような目で、甥を見つめていた。
「あなた、のお盆の集まりで、私に言ってたわよね。『奈美は母親がんで精神にボロボロだから、俺がつきっきりで面倒見てやってる。俺がいないとあいつはきていけないんだ』って……」
背筋に、たいが吹き抜けた。
「私、なんて派な夫かしらってしたのよ。でも……あれ、全部自分の柄にするための嘘だったの?」
決定打だった。 部のである叔母の無邪気な証言が、夫の築きげてきた「聖」
の虚像を、々に砕した。
妻の絶望すらも、親族への見栄の具にしていた。