"離婚半年後、元夫が15年前の弁当箱を抱えて訪ねてきた" 第5話
付と刻を記し、クラウドに作った『婚トラブル記録』というフォルダへ放り込んだ。
で受け止めてはいけない。
これはではなく、ただの法為の予備軍であり、客観な記録として処理すべきデータだ。
保を終えると、修のアカウントを即座に「通オフ」に設定した。
ブロックすれば、逆してアパートへ押し掛けてくる危険がある。
通を切って界から消し、何かあれば証拠として警察や弁護士に差しせる状態だけを維持する。
息をえ、引きしの奥から冊のファイルを取りした。
表には、きでこうかれている。
『域向け 庭料理ワークショップ企画』
これは、私が先からに準備をめてきた、私自のしい歩だった。
曜の昼休み、私は勤務先である品配送会社のオフィスを抜けし、歩いて分ほどの所にある区公民館を訪れていた。
事務の奥にあるさな相談ブースで、域振興課の担当職員である代の女性、沼田さんと向かいう。
テーブルのには、私が作成したA4用枚の企画が広げられていた。
「『暮らしのための、使い切り庭料理教』……ですか」
沼田さんが老鏡の奥の目を細め、企画に線をらせる。
「ええ」
私は背筋を伸ばし、はっきりとした声で答えた。
「この域は単の齢者や、仕事で忙しい独世代が増えています。スーパーで材を買っても余らせて腐らせてしまう、あるいは最初から自炊を諦めて惣菜ばかり頼ってしまうという声をよくにします。ですから、回の買い物で品を着実に作り回す、基礎な恵を共するを作りたいんです」
「なるほど。内容はとても素らしいですね。公民館の調理も平の昼なら空きがありますし、域貢献の事業として採択しやすいです」
沼田さんは応えのありそうな笑みを浮かべた。
だが、次の瞬、元の予算計画に目を落として眉をひそめた。
「佐藤さん、これ……参加費、おあたり材料費込みで百円になってますけど、本当にこれでりるんですか?」
喉の奥が、ちくりと痛んだ。
「あ……はい。参加しやすい価格設定のほうが、が集まりやすいかといまして」
「調理の利用料がで千百円。材費を分計算したら、これ、あなたの元には円も残らないどころか、しでも材が値がりしたら持ちしになりますよ? あなたの指導謝はどうなってるんですか」
「私は……自分の勉にもなりますし、最初はボランティアのような形で……」
言い淀む私の脳裏に、週末の誠さんの言葉が鮮烈に蘇った。
『美紀さん、自分のを売りするのはやめよう』
『誰かのために無料で働くことを当たりにしてしまうと、相はそれを謝ではなく当然の権利だと錯覚し始める。君の技術には、正当な価値があるんだ』
ハッと息を呑んだ。
私はまた、無識のうちに同じ過ちを繰り返そうとしていたのだ。
に受け入れてもらうために、自分の労働をタダで差しす。
相の嫌を損ねないために、自分の懐を痛めて帳尻をわせる。
修と義母のでやり続けてきた『都のいい自己犠牲』を、私は無識のうちにこの企画にも持ち込んでいた。
「……申し訳ありません」
私はく息を吸い、ペンをに取った。
「計算をやり直します」
「ええ、そうしてください」
沼田さんは優しく頷いた。
「私たちはあなたの善を搾取したいわけじゃないんです。域で持続能な活にするためには、主催者がきちんと対価を得て、疲弊しない仕組みを作ることが第条件なんですから」
私はそので計算を叩き、参加費を千円に設定し直した。
材料費千円、費と所代の割り百円、そして私の講師料として百円。
集まれば、千円の報酬が私の元に残る。
決してきな額ではない。
けれど、誰かの妻や嫁としてではなく、「佐藤美紀」という個の労働に対して支払われる、正当な対価だった。
修正した類を提し、公民館の自ドアをたとき、見げたの空がどこまでもく澄み渡っていた。