"離婚半年後、元夫が15年前の弁当箱を抱えて訪ねてきた" 第17話
擦り切れた表を指先でなぞると、のざらついた触が、張っていた指先に確かなを与えてくれた。
の私が見果てぬとして諦めたものが、いま、現実の類となって鞄のに収まっている。
区公民館の会議でわれる、『域自主企画コンペティション』。
採択されれば、半の調理の無償貸与と、政の援による広報支援が受けられる。
代半ばの女が、誰の妻でも嫁でもなく、自分の名で社会に旗をてるための、最初の砦だった。
午半。
会議のな扉をけると、内には異様な緊張が漂っていた。
審査員席には、区の域振興課、社会福祉協議会の幹部、そして部の経営コンサルタントとわれるスーツ姿の男女が、厳しい表で並んでいる。
の発表者は、の配チェーンや、実績のあるNPO法の代表ばかりだった。
プロジェクターに映しされる華やかなスライドと、洗練されたプレゼンテーション。
かつての私なら、その威圧に気圧され、「私のような主婦がりが違いなのでは」と縮こまっていたかもしれない。
けれど、いまの私の元は、微だにしなかった。
「次の方、どうぞ。佐藤美紀さん」
司会の声に促され、私はまっすぐに演台へみた。
呼吸をつ落とし、元のマイクのスイッチを入れる。
「『孤を防ぎ、自を支える――数制・循環型庭料理テーブル』の提案をさせていただきます。佐藤美紀です」
会の空気が、わずかにいた。
私は用したスライドをめくり、数字を提示した。
単齢者の孤や若者の偏といった般な課題を並べてるのではない。
私が先、自腹で公民館の調理を借りて催した、回のトライアル講座の々しいデータをスクリーンに映ししたのだ。
「参加費は千円。材料費千円、費・設備費百円、そして私の講師料として百円。元に残る利益は、回あたりわずか千円です」
審査員の、鏡をかけた初老の男性が眉をぴくりとかした。
「ずいぶんな事業計画ですね。元に千円しか残らないのであれば、ボランティアと差ない。企業の参入のような派さも、事業としての拡張性も見せません」
予通りの鋭いツッコミだった。
私は怯むことなく、男性の目をまっすぐに見据えた。
「その通りです。ですが、既のボランティア団体のくが、主催者の『善の無償労働』に依し、数で過労するように解散しています」
静まり返る内。
私はノートパソコンのキーを叩き、枚の円グラフを表示させた。
「庭料理というものは、『無償で提供されて当たりの事』として過評価されてきました。
だからこそ、域の料理教も『さ』ばかりが求められ、教える側がすり減っていく。私は、自分の労働を売りしません。回百円の指導料を確実に計し、赤字をさない最単位の運営を確すること。それこそが、続く域インフラの条件です」
審査員席の空気が、確に変わった。
コンサルタントとおぼしき女性が、ペンをらせながらを乗りしてくる。
「もし、あなた自が病気で倒れたら? あるいは材費が騰したら、この利の仕組みは瞬で破綻するのでは?」
「破綻させません」
私は即答した。
「この教の目は、私が料理を振るうことではなく、参加者同士が『お互いに教ええる自したコミュニティ』を育てることです。すでに回の参加者である代の単男性が、買いしと会設営のサポート役としてを挙げてくれています。また、隣の個百と提携し、規格野菜を適正価格で仕入れるルートも確保しました」
私は鞄から、あの歳のノートを取りし、演台のにトンと置いた。
、ただの物語として嘲笑されたきの言葉。
それが、の過酷な台所仕事と、婚の徹な試錯誤を経て、血肉の通った事業計画へと昇華されていた。
「庭料理は、誰かを無償で支配するための具ではありません。
ひとりが自分のできるための、最もなきる技術です。